日本酒(清酒)の製造工程は複雑なので、できるだけ簡単に説明いたします。
蒸米・製麹
まず、玄米を精米します。この精米歩合によって製品の特徴が変わるのでとても重要な作業です。精米するのは、玄米の胚芽や外層部に微生物の栄養源となる成分が多く含まれるため、麹菌や酵母が過度の生育状態となり、良質の酒ができないためです。
そして洗米・浸漬した米を蒸します。蒸した米に、種麹(微生物を培養したもの)を接種し生育させます。これが麹と呼ばれるもので、この作業を製麹(せいきく)といいます。
米を蒸すのはデンプンのα化を行い麹菌の酵素作用を受け易くすることと、水分調整、付着している雑菌の殺菌を行うためです。
酒母
出来上がった麹を用いて酒母(しゅぼ)を作ります。酒母とは「もと」とも呼ばれる予備発酵で、伝統的な生(き)もと(現在ではほとんど作られていない)や、それを改良した山廃(やまはい)もと、さらに現在主流の速醸(そくじょう)もと等の製法がある。また、酒母を作らないで本発酵を行う酵母仕込という方法もある。
※「もと」は漢字(西元)なのですがフォントが無いためひらがなで書いています。
速醸もとでは、麹と水を混合しそこに乳酸と酵母を添加します。そして蒸米を加えて発酵させ、約2週間で出来上がります。山廃もとでは乳酸を用いず、自然発生する硝酸還元菌や乳酸菌が生育・死滅後に酵母を添加します。この場合約4週間ほどかかります。
仕込
今度は出来上がった酒母をベースに本発酵を行います。仕込は蒸米や麹、水を3回(4日)に分けて徐々に加えながら発酵させる、三段仕込と呼ばれる方法で行います。また、この3回を順番に初添、仲添、留添と呼びます。
まず初日の初添は、酒母に麹、水を加えそして蒸米を添加し発酵させます。翌日は踊りといい、酵母の増殖をはかるため仕込を休みます。そして3日目の仲添は、仕込中のタンクに麹と水、蒸米を添加し発酵させます。さらに翌日の留添も同様に麹と水、蒸米を添加します。ここまで行ったものをさらに20〜25日間ほど発酵・熟成させます。これがもろみと呼ばれるものです。また、吟醸酒や本醸造酒の場合、もろみの発酵・熟成が完了した段階でもろみに醸造アルコールを加えます。
仕込を3回に分けて行うのは、酒母中に形成させた酸やアルコール、酵母濃度が急激にうすめられるのを避け雑菌による汚染を防止するためや、発酵に必要な糖分濃度などを調整するためです。
また、製麹や発酵・熟成は温度や湿度、酸素、時間の管理が非常に微妙で難しいため、おいしい日本酒を造るために日々研究・改良されています。
製品化
熟成したもろみを圧搾機にかけて圧搾し、清酒と酒粕に分けます。この操作を上槽(じょうそう)といいます。次にこれをオリ引き(白濁している成分を沈降させ取り除く)し、さらにろ過を行います。この段階のものが新酒です。
次に新酒を火入(ひいれ)します。火入とは加熱することで、貯蔵中の変質を防ぐために60〜65℃に加熱し有害微生物の殺菌、酵素の失活などを行ないます。火入が終わったらこれを貯蔵します。貯蔵することにより新酒香が消え、味も丸くなります。
貯蔵が終わった清酒は、仕込タンク毎に若干味のばらつきがあるため、数本のタンクの酒を調合し品質を均一化します。この段階のものが原酒です。
このままではアルコール分が高いので、割水(加水)して調整します。さらに、再度火入し加温したまま充填し、日本酒(清酒)の出来上がりです。
※生タイプのお酒は、火入や貯蔵の方法が上記とは異なり、いろいろな方法が採られています。(その三 種類の秘密を参照)
協力 秋川酒造(株)
|